「ニッポンの芸能人」シリーズ40


CD「リンゴ追分・これくしょん」
 この6月(2005年)、美空ひばりの17回忌ということで、テレビの歌番組でくり返し美空ひばりが〔登場〕した。
 そして、この7月、彼女が所属していたコロムビアから「リンゴ追分これくしょん」というCDが発売された。
 作詞小沢不二夫、作曲米山正夫、歌美空ひばり「リンゴ追分」オリジナル(昭和27年、1952年録音発売)を第一曲目として、14曲の「リンゴ追分・バリエーション」が収録されている。
 つまり、尺八、サックス、オカリナ、ピアノ、ヴァイオリン、フルート、三味線、そして、アルゼンチンタンゴ、フル・オーケストラ、さらにジャズボーカル、ロック……まで多彩な演奏スタイルとアレンジで「リンゴ追分・ワールド」が展開する趣向である。
 したがって、テイストは「懐かしくて新しい」である。

小沢不二夫はぼくの叔父で師匠
 作詞の小沢不二夫は劇作家であった。
 36歳で逝ったぼくの母の弟にあたる。つまり叔父であった。
 この叔父小沢不二夫も52歳という作家としての最盛期に逝ったのだが。
 昭和27年(1975年)、ラジオ東京(TBSラジオ)の放送劇として「リンゴ園の少女」がスタートした。脚本は阿木翁助、堀江史朗、そして小沢不二夫。(ぼくは大先輩阿木翁助、堀江史朗両作家にもじかにお目にかかっている)
 この裏番組として前記お三方とは親しいお仲間の菊田一夫作「君の名は」(NHK)がスタートする。視聴率はデットヒートを展開するのである。
 「リンゴ園の少女」は映画化されて、その主題歌として「リンゴ追分」が制作された。(映画でのひばりの父親役は、山村総であった)

7月10日、夕方の電話
 その電話は叔母である小沢弥生からで「これから家へ来られるかしら?」であった。
 叔母(つまり小沢不二夫のパートナー)は、叔父と同様、あの新宿ムーランルージュの舞台に立っていたひとである。いまも健在で、折をみてはよくおじゃまする。
 叔母と甥という近しいかかわりもあるのだが、ぼくのワイフもまたいろいろとお世話になっているのだ。
 というのも叔父と叔母が、私費を投じて庭にけい古場を建て、「むさしの演劇ゼミナール」を始めて、ワイフは演技部、ぼくは文芸演出部に所属していたのだ。
 したがって、いまもの書きとして夫婦仲良く暮らしていられる基に、師としての叔父と叔母が存在するということである。
 その叔母小沢弥生が「このCDを一日も早くあげたいと思って……」と、電話をくださったのだ。
 その日、叔母とワイフとぼくの三人で、しみじみとCDを聴いた。
 そして、その帰りに、叔母はペアの湯呑みをプレゼントしてくれた。
 大きいほうの湯呑みは叔父小沢不二夫が愛用していたものという。
 一緒に下さったお茶をいれて、その湯呑みで味わうお茶の味わいには、「人と人のえにしの和やいだ香り」があった。

竹中労氏の「美空ひばり論」
 ルポライターの竹中労にはさまざまな芸能に関する著作があるが、彼の美空ひばり賛歌はン十年も前からだった。
 音楽評論家の中村とよう氏(ビートルズ日本公演の以前からぼくは東芝EMIの音楽番組の構成をいくつもやっていたので、中村とうよう氏ともじかにお目にかかっている)は、竹中の熱狂的な美空ひばり礼讃論に、「もういいかげんにしたら」と忠告したとか。
 ちなみにぼくは、横浜伊勢崎町にあった横浜国際劇場で、かわい子チャンだったひばりのステージを見ている。
 ところでこのCDのライナーノートは鈴木啓之氏が書いているのだが、次の一文にぼくは、小沢不二夫との叔父・甥の関係を離れて、心から共感の拍手をした。
 ――「(ひばりの)晩年の傑作「川の流れのように」は、美空ひばりのために書かれ、歌われた作品であるが、「リンゴ追分」は、美空ひばりが日本人のために歌った作品であった。不朽の名作は世代を超えて、これからもずっと歌い継がれてゆくことだろう。
 小沢不二夫7回忌法要の折の記念写真には作曲(「津軽のふるさと」では作詞も)の米山正夫氏が写っているが、その米山氏もいまはいない。
 

— posted by 本庄慧一郎 at 05:14 pm  

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平和を願う歌
「鳥になれたらいいね」
総合プロデュース:本庄慧一郎
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