「ニッポンの芸能人」シリーズ43


元禄時代の大金持の異常世界。
 ぼくはとりあえず時代小説家だから(文庫オリジナル書き下ろしだけでもう30冊を越えた)、江戸時代の資料本は古本屋ほどある。
 いま元禄時代(1688〜1704)を素材に小説を書いているが、例によって紀伊国屋文左衛門とか奈良屋茂左衛門といった「談合」の元祖みたいな男たちが出てくる。彼らは材木商で、幕府御用の建築や、当時、火事になれば黙っていても莫大な利益をふところに出来たという、それこそ「火事場ドロボー」のような商売で、バカバカ暴利をむさぽった。そう、現在の悪徳役人と悪徳業者の「管制談合」の元祖のような男たちだ。
 そのアブク銭で彼らは幕府公認の遊廓の女郎たちを好き勝手にもて遊んだ。なにしろ女郎ン百人という吉原そっくり買い切って、ついでに周辺のそば屋も買い切って、惚れている女郎のために一人前のそばを作らせたとか……とにかく阿呆なことをやって競って金を遣っている。
 でも、吉原あたりの一流の女郎たちはなかなかの教養人であったといくつもの資料にある。

ホスト・クラブという異常世界。
 ずっと昔は、ぼくが新宿歌舞伎町を歩くと、フツーの人たちがわきによけてくれた。ちょっとコワイおニイさんに見えたのだろう。だからあの町はよーく知っているし、よく呑み歩いた。が、いまは行かない。大嫌いな街だ。
 近頃あの街にはホスト・クラブとやらいう店が賑わっていて、ゲーノー人まがいの若い男が女性客を相手に商売をしているようだ。つまり、若い男が女客をチヤホヤする店である。テレビでそのドキュメンタリーを観た。
 一本ン十万円のウィスキーやシャンパンの栓を次々と抜く。女客をおだて煽り立ててイッキ呑みをする。
 ホストたちが売り上げを競って女客に土下座して高価なボトルを注文してくれと直訴する。見得も外聞もなく哀願し、口説き、強引に承諾させる。
 その図々しくあざとい強制に、女客たちはニタニタしながら承諾する。
 そして一晩の請求額が100万、200万、いや300万を越えることもあるという。
 しかも、売り上げコンペでトップを切るホストの1ヵ月のギャランティは600万円……いや1千万という者もいるとか。
 江戸時代の〔吉原〕が男客相手の場所なら現在のホスト・クラブは〔女客相手の今様吉原〕だね。
 この異常な商売が堂々とまかり通っている不思議さ。
 あのホスト・クラブの俗悪としかいえない若い男たちと、喜々として通う女客たち――その病的な商売はいつまで続くのか。そしてその結末はどうなるのか。
 ぜひ知りたい。

ホスト・クラブの喧噪とテレビのバラエティ番組の喧噪と。
 いわゆるテレビのバラエティ番組とかクイズ番組などの乱痴気騒ぎはもうアタリマエになった。
 そのわざとらしさ、仰々しさ、コケおどかしのセット。そして、叫ぶ、わめく、がなる!
 異常を日常にしてしまって、平然としている人間ばかりだ。
 いや、テレビのCMも同様に、やたら叫ぶ、わめく、がなる!
 ただもう俗悪としかいえないCM群の向こうに、まっとうな「Corporate Mind」を喪失した企業経営者や担当者たちの顔が見える。さらにこれでいいとしているメディアや広告代理店などの関係者の脂ぎった顔が見える。
 たとえば、みのもんた、明石家さんま、タモリ、たけし、それに島田紳介……なんていう連中に1年間お休みしてもらったら、現在のテレビ番組はどう変わるんだろうか――?

— posted by 本庄慧一郎 at 05:10 pm  

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