「社会&芸能・つれづれ愚差」第7回(通算117回)

〔居場所難民〕のこと
 芸能人というのか、テレビ寄生人種というのか、ま、どちらでもいいのだが、とんでもないアブク銭をつかんだ者が大豪邸を建てたりする。
 しかし、毎日ワサワサと駆けずり回っているその邸のあるじは、ほとんど帰って来なかったりする。帰って来てものんびりくつろぐ時間もなく、寝室と風呂場とトイレを往復してそそくさとまた出かけてゆく。
 独身者はそれでもいい。が女房も子どももいる者も、ほとんど家族との和みの時をもつことはない。
 つまり、豪邸や別荘を持っていても、たいていは彼らは人間としての〔居場所〕を確保していないのである。
 いま、いわゆる団塊の世代の大量定年時代が始まったといわれているが、仕事一途に過ごして来た彼らは、あらためて〔居場所難民〕といわれている。
 退職金目当ての熟年離婚――言うなれば、同志であり、良き伴侶であった(はずの)女房ドノに、ずばり愛想づかしを宣告されるという事態がヒン発しているとか。
 離婚という表面立った事態に発展せずとも、(夫婦ともども世間体を気にしての)家庭内別居などはザラにあるようだ。
 具体的にいえば、あらためての夫婦という関係を拒否されるという(アカの他人にリセットする)ということだ。
 別の言葉でいうなら、目下、〔居場所難民〕増殖中である。
 立派なマイホームがありながら、人間としての、男としての、あるいは精神的な居場所がないということは、ほんとうに哀れだ。
 すでに巷にはホームレスなる人種が、ウロウロしている。いや大きい公園の樹木に隠れて、あるいは都会の河川の沿岸などのビニールハウスで、その日暮らしをしている。
 帰るわが家がない、心を存分に解放し、くつろぐ場所がないという意味では両者は同じである。
 たとえ家もあり家族がいて、また別荘などあったとしても、心底、おのれのすべてを解放しくつろぐことの出来ない者も間違いなく別種のホームレスである。

ジェットコースターの事故 
 大阪市エキスポランドとやらのコースターの事故は、現代のすべての問題を象徴している。
 JR尼ヶ崎線の大事故は当然のこととして、原因である〔金属疲労〕はすべて人間の〔精神疲労〕と直結しているのだ。
 かのマンション耐震偽装事件も、トラック脱輪事故も高層エレベーターの事故も、回転トビラ事故も、湯沸かし器事故も、さかのぼれば航空機の事故も……例外なく金属疲労とそこにかかわる者の精神疲労が直結して発生したものだ。
 なにもかもが機械化されて、生活が、人間がそっくりそのシステムに取り込まれている現在、〔ジェットコースター事故〕と同種同質の忌しいケースは続発するだろう。

〔常軌を逸する〕という共通項
 35年ローンなどという人生の主要時間をそっくりかけて返済した家のローンをやっと完済したあげくの定年退職。でも、その家に居場所がないということはどういうことか。
 そういう人生って、スピード・オーバーと金属疲労で取り返しのつかない大事を招いたジェットコースター(JR尼ヶ崎線の事故などとも)と同質と思えてならない。
 〔常軌を逸した――まっとうな道をはずれた〕といえば、堀江ナニガシとか村上ナニガシとかもいた。
 ワンサとお金を儲けたあげく、コースからスピンアウトして、拘置所や刑務所を経て、前科という二文字付の場所に着地する――。
 まともな、健全な市民としての軌道をはずすことなく生きたい。
 つましくとも貧しくともいい〔居場所難民〕になりたくない。

— posted by 本庄慧一郎 at 11:54 am  

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