「ペテン師と詐欺師」日生劇場(08.1.7所見)
鹿賀丈史・市村正親という手堅い役者を揃えてのミュージカル・コメディということで期待して観た。
このお二人の演技の技巧をうんぬんする以前に題名の「ペテン師と詐欺師」についてこだわった。というのも07年を象徴する漢字の「偽」が示すように、現今の日本の政治・社会はすべからくペテン師&詐欺師のオン・パレードだからだ。
しかし、この物語りの原作は外国のその昔のこと、というわけで「その昔、ある国のあるリゾート地で、こんなドタバタがありました」という枠を出ない――といより派手な日生劇場の舞台のプロセミアムから観客席へとビンビン響いてくる「共鳴感」が希薄だった。
「コレはこれ」「ソレはそれ」ということなんだろうな。
そう歌舞伎の「古典」という演目を眺めているような距離があった。
ご両所のファンらしき女性客(がほとんどで男性はチラホラ)は好意的な拍手をしていたが、とにかく「現代」と乖離した舞台には素直に同化できなかった。
歌舞伎はともかくとして、「その昔のお話」を現代に蘇生(再演)するためには、やはりそれなりの工夫が必要ではないんですかね。
菊田一夫作「花咲く港」も観たんですけど……。
いつだったか、国立新劇場で同じペテン師を主人公にした菊田一夫作「花咲く港」を観たが、あの場合にも「現代を撃つもの」はなかった。
そう、素材がペテン師や詐欺師でなければ「コレはこれ」でもいいが……。あらためて言いますけど、現代の日本の政治・社会にバッコする「偽」と無関係の「ペテン師と詐欺師物語」って……妙なモノですね。
そういうコトを現代演劇の舞台に求めるのは誤りなんでしょうかね。
そういえば、テアトルエーの1月29日からの公演、俳優座劇場の「エリック&ノーマン――Cash on Delivery」も、ペテン師のお話だったなあ。
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