「社会&芸能・つれづれ愚差」第135回(通算245回)

「自分のコトバで語っている」ということ。


 鳩山首相のスピーチがとりあえず評判がいい。
 その理由の一つに「自分のコトバで語っている」というのがある。
 つまり、いままでの首相たちは、官僚などが作成した原稿を棒読み(?)していたということらしい。
 とりわけ前首相アソーさんの場合――とんでもない誤読や意味の取り違えなどがあれこれあって、ただもう呆れるというか、うんざりするというか・・・・・・だったね。
 それでは、議会でのスピーチなどではなく、〔個人〕に立ち戻った時の〔しゃべりコトバ〕はどうだったかというと、これもまた、ひとりよがりで、ゴーマンで、エテガッテ・・・・・・で、説得力も親和力もゼロだった。
 もうひとつ言わせてもらうと、個人としての〔心根〕に決定的なズレやゆるぎがあって、ハンパなテコ入れや修繕では正常にならなかった――そのことが、現在の〔政権交代〕という逆転劇の主原因になったといえるだろう。


三遊亭円楽さんが亡くなられた――。


 「自分のコトバで語っている」というコトぐらいで、評判をとるソーリ大臣がいるのは、どういうことかね? 考えてしまうんですよ。
 落語家の円楽さんが亡くなられた。
 落語は好きだし、関係書はヘタな古書店に負けないほどある。お仲間にも何人かの落語家がいる。もう少しPRするなら、いずれ〔戦時中の禁演落語〕についての舞台脚本(コメディ)を書く予定デス。
 さて、その落語の本道はいわゆる古典と称される演目である。
 つまり、師匠や先輩に〔口伝〕として受け継がれるのを原則とする。
 がんらい〔伝統芸〕といわれる歌舞伎も同様であった。
 しかし最近では、歌舞伎にも台本や脚本というモノが導入されてきて、現場の様相も大きく変化しつつあるのも事実だ。
 落語の世界にも、たとえば、麻生芳伸編「落語特選/上・下」「落語百選/春・夏・秋・冬」(いずれもちくま文庫)などがあり、それぞれの演目の物語や内容が活字化されている。貴重な労作である。(麻生芳伸さんは4年前に急逝されたが「時代物としての新作落語」を創ろうと具体的に話し合っていたのだが――残念!だった)
 いずれにしても落語の演目のコトバはいわば〔既製語〕であって、決して〔口から出まかせ〕ではない。強引に理屈をつけるなら、すべてが「自分のコトバ」ではない。しかし、そこには語り手としての、表現者としての〔芸〕が求められる。
 六代目菊五郎をはじめ、歌舞伎の世界には名優と称される人は多い。落語の世界では三遊亭円生をはじめ名人も大勢いる。
 彼らの伝記を読むと、いわゆる「無学文盲」ときめつけられた者も少なくない。
 ひるがえって考えると、芸や語りの名優名人と尊敬された彼らは、決して無恥、無知、無礼、ゴーマン、ゴーガンなどと謗(そし)りをこうむることはなかった。
 あらためて考える――人間と言葉について。
 つづまるところ、言葉を使う人間――その人間の心根の質が問われるということを。


結婚サギ(&連続殺人容疑)女性と堕落・失墜政治屋たちの秋。


 あらてめておのれの生業(なりわい)をかえりみる。
 半世紀以上(!)、日本語を素材にさせてもらってなんとか生きてきた。
 それらの日本語は、もちろん広辞苑に記載されている既製語で、現在の主な仕事の時代小説においては、まったく〔新造語〕など無縁である。
 言い方を変えるなら、出来るかぎり多くの皆さんにすんなり分かっていただけるようなコトバと表現を綴って、相応のおカネを頂戴してきた――となるのデス。
 いま、新聞・テレビなどで騒がれている結婚サギ女も、純情無垢な男たちを(たぶん)色けと甘いコトバでたぶらかしたはずである。
 人間に与えられた唯一の表現手段――コトバを愚かしいエゴと欲望のために悪用するサギ師たち(なぜ、師という字が付くのか?)が跳りょうする現代――コトバをないがしろにした愚かな政治屋たちが消えるのも当然であり、必然である。





P・S――
木の葉の散り急ぐ秋。
ちなみに〔わくらば〕ということばは、まず「病気におかされた木の葉」という意味と、
もうひとつ「嫩葉」と書いて「木の若葉」という意味もあるとか。
この秋、あなたの心の葉っぱは、どちらですか?

— posted by 本庄慧一郎 at 01:45 pm  

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