「社会&芸能・つれづれ愚差」第117回(通算227回)

映画「三十九枚の年賀状」のこと

 ぼくのコピーライター&TVCM制作時代、同じフィールドで活躍なさっていた図師三千男さんが〔劇映画〕を作った。(詳細は前々回書いた)
 「ぜひ観て下さい」と心からおすすめできる佳作である。
 TVCM制作(演出)では大ベテランだった人だが、劇映画は初めて手がけたという。
 CMと劇映画は、トコトン「似て非なるモノ」である。
 ぼくはこのことを、よくこんなふうに表現する。
 ――人気のラーメン屋がいきなり通が評価する日本蕎麦屋に転業できない。



 大手広告代理店やメジャーな制作会社(テレビやCMの――)を定年退職した人がいる。久しぶりに再会して、近況や現在のご自宅を訊くと、「もう名刺を持っておりませんので」と言う。
 会社や企業の肩書きが消えると、個人としての存在も消滅するらしい。
 図師さんは、TVCMとは全く異なるフィールドで〔いい仕事〕に着手した。これからも着実に発展していくだろう、と期待する。



 かつてTVCMのフィールドでも活躍なさった〔先輩〕に大林宣彦監督がいらっしゃる。
 ぼくもコピーライター時代から存じあげているが、劇映画の監督として、独自のポリシーを一貫させて魅力ある作品を作り続けている。
 その大林さんも〔新人・図師三千男監督〕に声援を送っている。
 ぼくも大林宣彦という人柄と作品世界に惚れています。



 「三十九枚の年賀状」の劇場用パンフレットの中で、図師三千男監督と作曲担当の桜井順さん(この人ともとりわけ親しい!)とぼくとで「あの戦争の敗戦時に、どこで何をして、何を思ったか」を語った要約記事が載っている。
 当時の各人に1〜2年の年齢差があって、その〔体験〕や〔思い〕に、微妙でかつ決定的ともいえる差異があり、つきあいとしては古いお二人の生い立ちなどをあらためて知って非常に興味ぶかかった。
 「戦争」という人間の無知がひき起こす〔大惨事〕は、そこに巻き込まれた人々の人生をそっくり狂わす悲劇をもたらす――。
 そうした事実やエピソードを基に、つとめて静かにおだやかにアピールするこの作品のねらいは、見事に結実している。


 戦争という事実を素材にした「劇映画」における人間賛歌の物語は、ともすれば〔戦争賛歌〕というとんでもない結果を引き出すことがあるのダ。



 「三十九枚の年賀状」は、
シネマート六本木(03−5413−7711)で上映中。
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/index.html Link

— posted by 本庄慧一郎 at 02:49 pm  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第116回(通算226回)

うっとうしく不快な季節

「選良」というコトバを辞書でひく。
――すぐれた人を選び出すこと。また、その選ばれた人。特に代議士をいう。(広辞苑)

 現在の政界を右往左往している者たちに――この熟語があてはまる人はゼロである。
 誠実で、真面目で責任感と義務感の確かなぼく(ウソつけ!)とはトコトン無関係のヤカラたちばかりが右往左往しているネ。
 それにしても……ヒドイ顔ぶれだなぁ。ダレが選んだの、この人たち。

映画のタイトル借用ということで

 「お買物中毒な私!」――なんて、どんな映画か知らん。
 でも、理不尽な不況・不平等な現在の安売りオン・パレードのさなか、まるで不必要なモノを目の色変えて買い漁っている者が多いなぁ。
 安物に群がるイナゴみたいな人たちに、ただタメ息をつく。

エラソーに言いながらコチトラも買い漁り

 なにしろ、コチトラ趣味のない朴念仁。
 本屋めぐりと古本屋漁りで、うれしくなるビンボー症デス。

・新刊――「石原慎太郎よ、退場せよ!」 斉藤貴男・吉田司著(洋泉社y新書)
・古書――「高瀬舟女船歌」 澤田ふじ子著(新潮社)
     「五年の梅」 乙川優三郎著(新潮社)
     「深川駕籠」 山本一力著(祥伝社)
     「大江戸人情花火」 稲葉 稔著(講談社)
     「江戸よ、語れ」 海野 博著(河出書房新社)
     「もうひとつの映画史/活弁の時代」 吉田智恵男著(時事通信社)
     「私は昭和の語り職人」 西村小楽天(エイプリル出版)
     「ドキュメント昭和史」全8巻 内川芳美他編(平凡社)
     「兵役を拒否した日本人」 稲垣真美著(岩波新書)


     「上山草人の妻」 三田照子著(自家版)

お勉強のために再読・三読した本

藤沢周平著「蝉しぐれ」(文芸春秋)/「藤沢周平未刊行・初期短編」(文芸春秋)/「冬の朝」「麦屋町の昼下がり」(文芸春秋)/「闇の梯子」「夜の橋」「花のあと」「橋ものがたり」「小説の周辺」(文春文庫)


 好みのホンを読んでいれば、少しは気が晴れる。

— posted by 本庄慧一郎 at 10:52 am  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第115回(通算225回)

市村正親「炎の人/ヴァン・ゴッホ小伝」(三好十郎作)上演

 2009年6月12日〜28日まで天王洲アイル銀河劇場で上演される。
 ゴッホに市村正親。演出に栗山民也。
 下高井戸(赤堤)の三好十郎先生宅の書斎で、原稿の清書、口述筆記などのお手伝いをしたのは、昭和28年〜頃だったか。
 三好十郎先生を師と仰いで、その戯曲集・詩集・論文集等を求めて精読した。
 すでに戦前のムーランルージュ新宿座の作家だった叔父の小沢不二夫に師事していたが、その小沢が三好先生と親しかった。
 それで小沢の推挙もあって〔武者修行〕にと三好十郎先生の門を叩いたのだ。

   新国立劇場における三好作品「浮標――ブイ」「胎内」(演出栗山民也)を観ている。
 三好作品を上演してくれるだけで……うれしいデス。

市村正親という俳優について

 劇団四季1975年――「エクウス」(ピーター・シェーファー作)の少年アラン・ストラングの市村正親を観ている。
 ナジェットという馬に寄り添うアラン少年の姿と、ダイサートという精神科医師を演じた日下武史……の二人のステージはいまもって記憶に鮮明である。(その後、ラジオ番組/TBSラジオやCMのナレーションなどで、日下武史さんとあれこれご一緒した)
 思えば劇団四季の初期、東京八重洲口にあった国鉄労働会館ホール(!)などの「ひかりごけ」(武田泰淳原作)や神田一ツ橋講堂での「せむしの聖女」(ジャン・アヌイ作)などをこまめに観ている。
 この「せむしの聖女」には当時6歳だったいとこの有美(小沢不二夫の長女――現在、女優の水沢有美)が出演していたので、付き人として稽古場に通ったりもした。




 「炎の人」は数多くある三好十郎作品の代表作である。
 もちろん民芸の舞台も観ている。
 民芸では、宇野重吉さんを語り手としてCM(初出演!)にご出演願った。(ヤマギワ電器の企業CMで「夕暮れにあかりが灯る」など)
 その後、当時の民芸のメンバーだった佐野浅夫・垂水吾朗・真野響子の皆さんともご一緒した。現在も〔民芸の大滝秀治〕としてご活躍の大滝さんにはSONYテレビのナレーションでご一緒したりと、いろいろ縁があった。




 「炎の人」については、あれこれの思いがある。
 それにしても「エクウス」のアラン少年を演じた市村正親がゴッホを演じるなんて……やはり時の流れをしみじみと思う。
 ところで栗山さん、ラストシーンで宇野重吉が語ったナレーションは今回どなたが担当するんですか?
 公演の成功をお祈りしています。       本庄慧一郎。

 

— posted by 本庄慧一郎 at 02:04 pm  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第114回(通算224回)

図師三千男さんの作った映画のこと

 かつてのぼくの生業は、テレビコマーシャルや広告制作だった。
 企画・コピー・制作とせっせと働いた。
 小説のフィールドに移ってからは、当時のお仲間とのつきあいはほとんどなくなった。
 でも、当時、大手CM制作会社で活躍していた何人かの人たちとはいまでも交流がある。
 それは、大きな企業や組織から離れても、変らぬ人間的魅力を有している人――である。
 たとえば、図師三千男さん。
 ちょっとごぶさたしていたら、「こんど映画を作りました」という連絡を頂いた。
 図師さんは、大学では演劇を専攻していたが、CMディレクターとして大手企業60社ほどのCM制作を手がけ、フルに活躍した。図師さんの「演劇」というアイテムでは、ぼくは大いなる関心を持っていたし、そのジェントルなお人柄にいっそうの親しみを感じていた。
   その図師さんが劇映画を作ったとは――うれしいねぇ!である。




タイトルは「昭和から愛/三十九枚の年賀状」

その宣材からのコピーをご紹介したい。

昭和二十年
あのときの少年少女たちへ

時代の濁流にながされていった
優しい日本人たち
じっと心に思いを留めながら
運命を受け止めて
与えられた時代を
ひたむきに生きた人びと

人が信じあうことの
喜びや哀しみを
淡々と語りたい
「昭和のメロドラマ」として

日本人は「昭和」から
何を学んだのだろう

制作 監督 脚本/図師三千男




●ものがたり

太平洋戦争が終幕に近づいていた頃、若い二人は出会った。視線がわずかに交わるだけの、一瞬の胸のときめき。そこから、四十年にわたって燃え続けたひそかな愛の軌跡が始まる。
――人を純粋に愛することのとてつもない美しさと尊さ。
それは、私たちが昭和という時代に置き去りにした、大切な心の忘れものだった――笑いと涙でつづる感動の物語。(パンフレットより)




 しみじみと、ほのぼのと……いい映画です。
 どうぞ皆さん、お誘い合わせのうえ、ごらん下さい。
 得難いカタルシス(快いこころの浄化作用)があります。
                     本庄慧一郎

2009年6月20日(土)よりロードショー
 シネマート六本木 TEL:03−5413−7711
   URL http://www.cinemart.co.jp Link

— posted by 本庄慧一郎 at 02:04 pm  


*** お知らせ ***
自主CDを制作
21.1:130:128:0:0::center:0:1::
平和を願う歌
「鳥になれたらいいね」
総合プロデュース:本庄慧一郎
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