ぼくのコピーライター&TVCM制作時代、同じフィールドで活躍なさっていた図師三千男さんが〔劇映画〕を作った。(詳細は前々回書いた)
「ぜひ観て下さい」と心からおすすめできる佳作である。
TVCM制作(演出)では大ベテランだった人だが、劇映画は初めて手がけたという。
CMと劇映画は、トコトン「似て非なるモノ」である。
ぼくはこのことを、よくこんなふうに表現する。
――人気のラーメン屋がいきなり通が評価する日本蕎麦屋に転業できない。
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大手広告代理店やメジャーな制作会社(テレビやCMの――)を定年退職した人がいる。久しぶりに再会して、近況や現在のご自宅を訊くと、「もう名刺を持っておりませんので」と言う。
会社や企業の肩書きが消えると、個人としての存在も消滅するらしい。
図師さんは、TVCMとは全く異なるフィールドで〔いい仕事〕に着手した。これからも着実に発展していくだろう、と期待する。
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かつてTVCMのフィールドでも活躍なさった〔先輩〕に大林宣彦監督がいらっしゃる。
ぼくもコピーライター時代から存じあげているが、劇映画の監督として、独自のポリシーを一貫させて魅力ある作品を作り続けている。
その大林さんも〔新人・図師三千男監督〕に声援を送っている。
ぼくも大林宣彦という人柄と作品世界に惚れています。
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「三十九枚の年賀状」の劇場用パンフレットの中で、図師三千男監督と作曲担当の桜井順さん(この人ともとりわけ親しい!)とぼくとで「あの戦争の敗戦時に、どこで何をして、何を思ったか」を語った要約記事が載っている。
当時の各人に1〜2年の年齢差があって、その〔体験〕や〔思い〕に、微妙でかつ決定的ともいえる差異があり、つきあいとしては古いお二人の生い立ちなどをあらためて知って非常に興味ぶかかった。
「戦争」という人間の無知がひき起こす〔大惨事〕は、そこに巻き込まれた人々の人生をそっくり狂わす悲劇をもたらす――。
そうした事実やエピソードを基に、つとめて静かにおだやかにアピールするこの作品のねらいは、見事に結実している。
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戦争という事実を素材にした「劇映画」における人間賛歌の物語は、ともすれば〔戦争賛歌〕というとんでもない結果を引き出すことがあるのダ。
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「三十九枚の年賀状」は、
シネマート六本木(03−5413−7711)で上映中。
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/index.html
