現在の書斎は、古書店の倉庫のようで「創作の遊園地」になっている。
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●G3の昔語り。
「家庭用手編み機」をお持ちの方は「メリヤス編み」の編み目をご存じでしょうね。1カ所、糸が切れるとパラパラと、とめどなく縦に編み目がほどけてゆく。これが、普通の布地と異なる「メリヤス編み」の特長です。
わが父親は芸事(小唄、都々逸/落語、講談)が大好きだった。
「男は酒をのむようになったら、都々逸の一つや二つ、小粋に唄えねばイモだ」
埼玉県本庄、中山道の「マユの仲買商」のひとり息子で大事にされていて、小学校への往復に人力車が用意されたとか。
しかし、当主の父親が30代のはじめに病気で急死。たちまち商売はトン挫。祖父母と東京に出てきた――とか。
ガンコで短気なわが父は、酒が体質的に合わないせいか、飲まない。が、酒席では得意げに小粋な都々逸などを唄った。
ついでに息子のぼくに、その都々逸なるものを教えた。
♪この道を行けば近道 わかっちゃおれど
行けば別れがはやくなる〜
♪かわいそうだよ ズボンのおなら
右と左に泣き別れ〜
コピーライターになって、よく(大)スポンサーに接待されて……またスポンサーの好意で、赤坂の料亭にはべることがあった。
小粋な芸者さんが三味線で唄い、踊ったりすると、そのあと「何かおひとついかが?」となる。そんな時、♪かわいそうだよズボンのおなら〜 などとやると、拍手かっさいで、人気者となった。
この父親が、母親の実家の商売(メリヤスの製造業)の職人として働いていた。つまり「そこの娘」と一緒になるためにである。(その娘が私の母親!)
そのメリヤス業の家の長男の小沢不二夫は、家業を嫌い、娯楽映画専門の大都映画でシナリオを書き、その後、ムーランルージュ新宿座で活躍。
戦後は劇作家、放送作家としても健筆をふるった。(母親の弟であるこの叔父を師匠として作家修業をした)
私も一時、メリヤスの仕事を(イヤイヤ)手伝わざるを得なくなったが、なんとか「物書き業」へと転身を果たしたのだが――。
したがって、セーターなどの「パラパラきず」などを器用に繕い直す特技を持っているという次第。
つい先日も、カギ裂き、虫食いの穴だらけのワイフのカーディガン、セーターを「え? へえ!」と感嘆詞を引き出すほどきれいに繕ったぞ!
そのうち「メリヤス編みセーター/カーディガン等のキズ直します」のPRでもするか!
ちなみに、メリヤスの当て字は「莫大小」。
語源ははポルトガル語の「meias/メイアシュ」やスペイン語の「medias/メディアス」だとか。
(コロナ禍の新春のあえて「ゆとり回想録」)
あの日の「蜜」がなつかしい!
各書店の余美太伊堂文庫のページへとびます。

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