あらためておのれの履歴をふり返ってみると、半世紀あまり一貫して日本語を素材にした仕事(ラジオ・テレビ・構成台本/舞台脚本/TVCMプロデユース・企画・COPY/時代小説・現代小説/五七五・評論集・エッセイ等)をしてきた。
現在の書斎は、古書店の倉庫のようで「創作の遊園地」になっている。
現在の書斎は、古書店の倉庫のようで「創作の遊園地」になっている。
●執筆スタッフ 本庄慧一郎(望田市郎)/みさき けい/深実一露
|
|
「物書き業」なら何でもいい――と思っていた。
●とにかく、生活してゆくための職業は「物書き業」がいいと、ガンコに思い詰めていた――。
1945年8月15日(大東亜戦争敗戦)によって、軍国少年は180度方向転換する。
もともと、母親のきょうだいたちがシナリオライター、映画監督、助監督、カメラマンなどだったから、コロリと方向転換できた。
●戦後、叔父たちが劇作や映画関係だったから、有無もない「必然」だった。
それまで、放送といえばNHKラジオしかなかった時代。民間放送が開局した――当然、生活費確保を大前提に放送作家としてスタートする。
そして時代の動向に従って、民間放送のラジオ、テレビに関わり、やがて小説や舞台脚本に移った。
好きな「音楽」を前提にCM音楽の作詞・制作に入れ込む。
その後、時代小説(文庫書き下ろし)や雑誌短編をムキになって書いた。
●「作家一筋」という一途さが欠けていた。
でも、好きな「物書き業」で何とか生活できたことに不満はない。
この2〜3年は、ついに電子書籍にまでたどり着いた。(2021年6月現在、30冊余)
コロナ禍の去年、今年――ぼくと同じ業界に働いていたお仲間たちが次々と逝っていることに気づいた。
「物書き業60年」というフィールドをあらためてかえり見た――。
●原則としてご同業の皆さんと「個人的なおつきあい」は控える――そのためではないがマージャン、ゴルフなどは一切やらない。
おサケの席も(広告・CM制作の場合は別として)お仲間とは同席しない。
だからといって「あいつは変人」と言われたことはなかった。
それにしても、このところかつての仕事仲間の皆さんの訃報が……続いている。
あらためて、おのれの年齢と「物書き業」で過ごした歳月をかえり見る――。
●2021年5月15日 作詞家:伊藤アキラ氏(享年80歳)
ぼくのコピーライター、CМ音楽、CМ制作時代は、ざっと四半世紀を越えるが、伊藤アキラさんとは、とりわけ親しかった。
望田市郎は広告コピーをはじめ、「書くこと」すべてに参入したが、伊藤アキラさんは「主として歌詞――CМ曲を中心に仕事する」と公言していた。
例外はいくつかあるが、彼のコンセプトは不動だったようだ。
温和なお人柄でつねにニコニコ顔をたやすことのない紳士だった。
広告業界(広告主/広告代理店/CМ・音楽制作プロダクション等)には、かなりの個性派人物が右往左往しているが、伊藤アキラさんのような物静かでいつもにこやかな表情を崩さないジェントルなキャラの人物はごく少数派だ。
彼との年齢差は8歳。新聞の記事で知った。
●2021年5月18日 声優・ラジオパーソナリティ:若山弦蔵氏(享年88歳)
ぼくは1960年代前後、赤坂TBSラジオで多様な番組の仕事をしていた。
同時期、若山弦蔵さんも、情報番組を担当していた。
担当ディレクターは親しい人だったので、生放送のスタジオをよく覗いた。
若山弦蔵さんのご自宅が同方向なので一緒に帰ることもあった。お人柄はジェントルで好もしかった。
アテレコのベテランということもあって、外国映画の話もよくした。
コピーライターとしてのぼくは、正統派の「声」を多用していた。
城 達也さん、矢島正明さん、黒沢 良さん、高山 栄さん……皆さん、日本語をしっかりと、快く「読み語る」プロフェッショナルだった。
当時は、実年齢など気にもとめなかったが、同年齢だったことを新聞記事で知った。
●2021年5月23日 俳優・演出・脚本家:志村智雄氏(享年76歳)
志村智雄さんは、劇団前進座の演出家だった。(俳優も!)
前進座の本拠地(劇場および稽古場、団員たちの住宅)のあるのが吉祥寺だった。
それに、ぼくの師匠である劇作家三好十郎氏の戯曲などを上演もしていたので、せっせと舞台をよく観た。
演出家志村智雄さんもわが書斎に来てくださったことがあるが、同じ演出家の高瀬誠一郎さん、津上 忠氏、香川良成氏の諸氏とも親しくお話することも多かった。
このところ、もっぱらテレビドラマなどで活躍なさっている中村梅雀さんのマネージャーのDさんとはとりわけ親しくお話する機会もあった。
なにしろ、中村翫右衛門さん、中村梅之助さん。または嵐 圭史さん、澤村國太郎さん……など。
ベテラン揃いの俳優陣で、骨太の意気のいい舞台は快く楽しめた。
芝居の舞台と同じように「時代という名の廻り舞台」は容赦なく廻る――。
手元には「グラフ前進座 創立55周年」(1986年発行)とある。
●2021年5月30日 作曲家・俳優:小林亜星氏(享年88歳)
小林亜星さんと初めてお目にかかったのは1965(昭和40)年だった。
ぼくは、放送作家というフィールドから、当時はまだ「清新の気に満ちていた」
広告産業へと転身する意欲マンマンだった。
ホンネを言えば、演劇――母体の仕事をと思っていたが、「生活費確保」という絶対条件を無視するゆとりはなく、それならば――という転身だった。
小さな広告代理店のコピーライターから、当時業界6位だった(?)第一企画(後の株式会社ADKホールディングス)への企画制作部に入社。
すでにレナウンの「ワンサカ娘」で作曲家小林亜星さんは本格始動していた。
つまり、ライバル(レナウン)のヒット曲を作曲した小林亜星さんにあえて接触したのだ。
結局(たしか)小林亜星さんに断られて……。ジャズのピアニストで作曲家だった八木正生氏(東映のヤクザ映画をジャズ感覚の曲でン百作品を担当した)に依頼して、それなりのモノを作ってクリアした――。
その後、俳優小林亜星を誕生させたのはTV演出家の久世光彦氏(久世光彦氏ともじっこんだった)で、「お茶の間の人気者」になった小林亜星さんとはパーティなどでたびたび親しくお話した。
有名人っぽいイヤらしさはカケラもない、あの巨体そっくりが純真無垢の魅力にあふれていたお人柄だった。
●そして、同時代、同フィールドで働いていた人たち――。
・作詞家・作家 阿久 悠氏 (2007年8月1日/70歳)
・作詞家・作家 なかにし礼氏(2020年12月23日/82歳)
・ギタリスト 寺内タケシ氏(2021年6月18日/82歳)
・作曲家 菊池 俊輔氏(2021年4月24日/89歳)
●あらためて皆様のご冥福を心からお祈り致します。
***
イラスト:やっぱっぱだいすけ
ニコヤンの目↓
Scenes of memories
2021年に振り返る顔いろいろ
2021年に振り返る顔いろいろ
【電子書籍 余美太伊堂文庫(よみたいどうぶんこ)のご案内】
主な取り扱い電子書籍ストアのご紹介
リンクをクリックすると、
各書店の余美太伊堂文庫のページへとびます。
各書店の余美太伊堂文庫のページへとびます。
Amazon/Kindleストア
楽天ブックス/楽天Kobo
BookLive!
BOOK☆WALKER
どこでも読書
honto
そのほか、iBook等のストアにて発売中です。
新刊 続々発売予定。

楽天ブックス/楽天Kobo

BookLive!

BOOK☆WALKER

どこでも読書

honto

そのほか、iBook等のストアにて発売中です。
新刊 続々発売予定。