「社会&芸能・つれづれ愚差」第308回(通算420回)

イメージしりとり風メモランダム

 不粋な男である。趣味といえるような趣味がない。ゴルフ?マージャン?まるでキライ。旅行?書くための取材は別として、ワザワザ出かけることは少ない。
 からだのための「1万歩ウォーク」は努めて実行するが。

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 寒気を理由にその「1万歩ウォーク」をサボっている自分がイヤになる。それで、ソレを兼ねて、久々の荻窪のささま古書店に出かけた。
 リュックサックにめいっぱいの10余冊を買い込んで、その重量(部厚い本もあって)に突っ転ばないように、しっかり歩いた。

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 あの3・11以後(早くも2年の歳月が過ぎた)物書き業としての己の思いにブレが生じて、出版関係者(と大仰に言うほどでもない)やワイフの許諾を得て、「方向チェンジ」の準備をしてきた。
 それは二又道でヒョイと角を曲がればOKといった簡単なコトではない。

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 趣味でモノを書いているワケではないので、書くモノは、書いたモノは、カタチ(出版とか上演とか)にしなければ意味がない。
 したがって、定年退職した人たちの「蕎麦打ち」作業のようにノホホンとしてはいられない。

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 ささま書店で買い集めた本は、現在、挑戦している戯曲の資料本である。
 たとえば「昭和特攻弾圧史」(全6冊のうちの1冊/大平出版)とか「ある昭和史」(色川大吉 中央公論社)といった昭和史を主題にしたモノばかりだ。

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 なにしろ、「自宅はすべて本だらけ」である。「本たちは夜中に勝手によからぬことをしているかのように増殖する」は、親しくして頂いている文芸評論家の縄田一男氏のコトバだが。ウンウンだ。
 書斎はもちろん、階段のワキも本ダナにしているし、階下の部屋二つも本だらけでアル。

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 3・11のあと、ボランティア団体の要請もあって、数百点余の小説本(エンターテインメント類)を福島に運んでもらった。
 古書店さんに来てもらって、演劇雑誌や明治・大正・昭和の(ン万円も出して買った!)パンフレットなど引き取ってもらえる本はワンサと処分した。

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 さらに、コツコツ買い集めた小説や評論集は、ほとんどタダで古書店さんに引き取ってもらって、なんとか本のスペースを作った。
 それらの本たちには、「ワイフに内緒にしてきたかつての恋人の手紙」を捨てるような未練があった――。

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 必要な資料本は小生のエンピツ書きの原稿をすべてPC処理してくれている娘に、インターネットで検索し、即購入してもらう。北海道から九州までの遠隔地の書店から送り届けられて、とにかく便利。この冊数も多い。しかし、お気に入りの古書店に出かけて、ウンザリするような書物のカバーを眺めて、アレコレ時を過ごし、結局またン10冊を買い求めたりするのでアル。

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 目下、昭和史について再勉強中である。昨年9月に上演したテアトルアカデミー睦組公演「炎と愛のフィナーレ/あるレビュー劇場の1945」も、2006年12月にテアトル・エコーで上演した「大都映画撮影所物語」も、芸能エピソードをからめているが、レッキとした昭和史ものだ。

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 今回、ささま古書店で買い込んだ本の中にある「昭和特高弾圧史」は、資料本としてはきわめて確実であり有効だ。
 あらためて舞台のホンを書くという思いを「井上ひさしさんの100分の8くらいのことは出来る」とヌケヌケと宣言している。(注・100分の8です!)
 この「昭和特高弾圧史」に関連しての資料として、広辞苑のように部厚い「続・現代史資料6/軍事警察」「日本憲兵昭和史/憲兵司令部編」を図書館から借用した。とことんおカタイ資料本である。

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 そういえば先々週には、「鋳物の街・川口」の図書館に出かけた。
 必要とする本は「貸し出し不可」でワイフのフォローで大量のコピーをした。
 現在の川口市は「どこにでもあるキレイなモダンな街」でまるで興味はない。
 あの戦時下の「軍需景気にわく工場街」のデータを掴むのは至難のコトか?(作業続行)

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 ささま古書店コレクションの中に「ある昭和史/色川大吉」に「東慶寺花だより/井上ひさし」がある。井上氏の時代小説も珍しいし、この本が彼の逝去後に出たモノであることに、小生にも格別の思いがある。(「俳句で綴る変哲 半世紀」(小沢昭一 岩波書店)も訃報の後に「ご恵贈本」を手にしたなあ。

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 その井上氏の「東慶寺花だより」も、色川氏の「ある昭和史」も参考資料列記の頁を眺めて、あらためて大ビックリした。
 井上作品では、シリーズや巻ものもあって、ざっと100点以上もある。
 色川作品も、ほとんど同数というか、それ以上だ。
 物書きとしてはお二人と同業(同期)の小生だが、この先達たちの「入れ込み」の度合いに、いまさらのように脱帽した!

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 そういえば、広告や電波メディアの仕事をしている者で、まるでそれらしきモノ(刊行物・出版物)がない者が、しきりに「作家」を自称・連呼している場に出くわすことがある。(エラソーに言いたかねぇけどサ)アレって、哀れでサギっぽいね。
 どこの世界にも、いつの時代にも「口先ばっかり野郎」がのさばる。イヤだなあ。

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 先日、インターネットで購入してもらった、「女たちの太平洋戦争 朝日文庫」「華北戦記/中国にあったほんとうの戦争 朝日文庫」。もう1冊「一銭五厘の旗 暮らしの手帖」が届いた。
 やっと確保した空スペースが、さっそく「新しい創作のカテ」でどんどん埋まってゆく。

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 山積する蔵書のうち、師である劇作家三好十郎氏の著作本(多数の評論集、もちろん全4巻の作品集やずっしりと分厚い三好十郎氏に関する評伝など、約100点ほどになるか)を筆頭に、井上ひさし氏関係の本があれこれあって、第2位をしめるか。
 「余命3ヶ月」の医師のがん宣告を受けて、肝臓がん3回手術の余後のベッドで、猛然と小説を書きはじめての小説「ダックコール」(早川書房)で、第4回山本周五郎賞を受賞した稲見一良氏。その後10年延命しての10冊の作品と雑誌、新聞等の多数のエッセイは大切に保存している。

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 この他、山本周五郎、藤沢周平、池波正太郎、さらに親しくさせて頂いた峰隆一郎氏の作品集はいずれもずらりと並べてある。  戯曲は真山青果全集や世界戯曲集などもある。

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 3月6日付の朝日新聞の広告を見て、買うつもりの本がある。「いま日本はタカ派ばかり」(佐高信/毎日新聞社)。 惹句に「老害醜悪・石原慎太郎/ちゃっかり便乗タカ・猪瀬直樹/口先三寸タカ・橋下徹/中退不安タカ・安倍晋三/お笑い無責任タカ・ビートたけし」とある。オモシロソー!
 佐高信氏の評論集も好んで買い求める。小生の嫌いな人物たちを、彼もまた小気味よくバッサリとやってくれるからだ。

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 井上ひさし氏のエッセイ集「ふふふふ」(講談社文庫)は、彼の意志が明快に読めてGOOD。前回の芥川賞の「共喰い」(田中慎弥/集英社)は、途中で……飽きた。作者のお人柄やメッセージはオモシロソーなのに。

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 とにかくいま、時代は「反動」「逆流」の気配が強い。それであえて戦時下、当時の国会で「反戦演説」をした斎藤隆夫とその関係資料も読み込みたい。

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寒月やさて行く末の丁と半
            ―― 変哲(小沢昭一)


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ケイちゃんの目 ↓

本庄の憧れの人

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— posted by 本庄慧一郎 at 01:24 pm  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第307回(通算419回)

2013年3月――本格の春を待ちわびながらのメモランダム

 2月24日東京新聞コラム『言いたい放談』/映画監督小栗康平氏の「人の声」を読む。
 2月4日東京新聞TOKYO発欄コラム『うらかた有情』 の「最後の音職人・玉井和雄氏」について書かれている。それを読んで、小生もまたあらためての感慨を抱いた。

***

 玉井和雄氏は文化放送の効果マンのベテランで、現在80歳になられるとか。
 「効果マン」とは、ラジオドラマなどの「効果音」を作るスタッフのことをいう。
 小生も若い時(放送作家として、また演劇のスタッフとして)効果音なるものに深く関わったことがあるので、玉井氏の記事を読み、その頁をキープしていた。

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 記事の中の玉井氏の言葉「テレビは嫌い。音が映像の奴隷だから」に、小栗氏もふれていたが、「音」に対する現在のテレビスタッフ及び出演者たちの無神経さにはウンザリするばかりだったから。

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 「効果音→SE→サウンドエフェクト」は、演劇のフィールドでは「擬音」と称していた。波の音も、そして雨音なども、現実音を録音したモノを再生して使うことはなかった。すべて、さまざまな工夫と道具で人工的に作成して、ドラマの物語や内容等にぴったりした「音」を創作して使用した。つまり、あらためての「作り物」の音だ。

***

 演劇青年の小生に「ドラマの音響」をコーチしてくれた人がいた。  かつてのニッポン放送に在籍していた加納米一氏だった。そしてこの加納氏とも親交のあった辻享二氏(お二人とも、新国劇、新派をはじめかずかずの商業演劇の舞台の効果音をも担当した)とも親しかった。

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 彼らの「創る」さまざまな「音」は、現実のそれ、(波、風、雨音などなど)とは異なり、そのときどきの舞台の物語や登場人物の「心情」や「所作」にシンクロして  いきいきと鮮やかな現実音とは異なる個性的な魅力を発揮した。

***

 小栗氏もふれられているように、玉井氏の言う「テレビは嫌い。音が映像の奴隷だから」は、現在のテレビのクオリティの全体に対しての評でもあると思っている。
 いや、テレビのみならず、かつてはていねいに制作されていたあれこれのテレビ番組も、いまや無神経で大ざっぱなタレントたちの「フリートーク」「その場かぎり」の出まかせパフォーマンスでひたすら「ダベリのごみため」になった。(一部を除いては……と申し添えるかネ)

***

 エンターテインメント番組の主流であるバラエティとかクイズ番組なんて、どれもこれもバカ騒ぎとワルハシャギばかりで、とてもコチトラ、つき合っていられない。
 たとえば、ずっと親しく仕事をご一緒してきたナレーターの城達也さん(あのTOKYO FMの「ジェットストリーム」)のような、品性と快い「語り」の楽しさを玩味させてくれるタレントなんて、いまやゼロだもんねぇ。

***

 なにしろ、ナレーターとか、TV局のアナウンサーの「語り」のディテールがひどい。
 キンキンのアニメ声(女性の声優?)がハヤリらしくて、TVCM、番組などにもやたら起用されているが、あのかん高い、奇妙なフシをつけた喋りはいまや、「音害―公害」だね。
 その他、ハナ声(甘ったれた作り声)の女性タレントの声そのもの。また不快でしかない男性タレントの「ツクリの喋り」など、まったくいいかげんにしてほしい!

***

 たとえば、「語りことば」だが、あらかじめ用意された原稿などを「語る―音声化する」場合にも、句読点や行カエのニュアンスも読めない。表現できない。さらにことばの一語一語に、肝心かなめの「意味」や「ハート」が託されていることも(ほとんど)ない。もうひとつ、本来のイントネーションを無視して勝手に「ナマって」いる!

***

 ついでに言うが最近のNHKがせっせと「民放化」につとめているのが、これまた不快でアル。どうして、そんな「アホな努力」をするのかね?
 週刊誌によれば、NHKの職員(スタッフ)らの年俸は1千ン百万円……とか。視聴料を徴収しているNHKは「それなりの質」を保って、劣化とダラクの一方の民放の番組を押しのける上質のモノを作りなさいよ!
 NHKがそんなテイタラクだから、粗製乱造の民放の「音声化する言葉」はそれはもう……です。
 そこへもってきて、ハートレスで無作法で勝手にワルハシャギする芸人たちやCM群の跳梁で、うんざりさせられるゼ。
 TV番組の視聴率獲得にナリフリ構わずの制作スタッフの皆さん、ホントにこのままで……いいの?
 そのうち小栗氏(ごぶさたしてます!)と玉井氏と3人でお話をしたいですね。

***

○追記

 原発再稼動問題は、もちろん未解決だが、あれほど声高に喧伝された「電力不足」はとりわけ寒さのきついこの冬(暖房需要のアップする)なのに、何故か鎮静してしまった。
 そういえば、繁華街の過剰ネオンもさらに冬の樹木いじめの無意味イルミネーションの自粛もないままである。
 あちこちのタワーの派手なライティングも、そして愚にもつかないテレビ番組のオンパレードも……使用電力の「ムダ使い」は放置されたままだ。
 ヘンというより、「インチキ」の臭気フンプンだねぇ。

***

 「誰でもいい」と口走って、刃物を振りまわし、銃をぶっ放す物騒な「害獣・害虫」みたいなのが右往左往している。
 そして「マダニ」とやらに噛まれて一命を落とす人が続く。
 そういえばアベ政権復活で「天下りダニ」も再び活発に動き出したとか。
 ああ、イヤだ、イヤだ、イヤだねぇ!

***

 東北青森地方のドカ雪、積雪なんと5.5メートル以上とか。83歳になる老婆がひとり除雪作業につとめる――。
 その状況を伝えるニュース映像。朝のワイドショーのスタジオで、その映像について「感想」をのべる女性タレントの、盛夏のような半袖ブラウス姿が異様に目に立つ。
 それでなくとも福島の被災者たちの避難先や仮設住宅での耐乏・耐寒生活が思いやられるいま、心なき「マスコミ人種たち」の跳梁に無性にハラを立てる。
 同時にこういう番組を「アタリマエ」とするテレビ局及び制作スタッフたちの怠慢に、手のほどこしようのない「堕落」を思い知らされる。


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ケイちゃんの目 ↓

本格の春を待つ
石神井・三宝寺池



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— posted by 本庄慧一郎 at 03:45 pm  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第306回(通算418回)

胡乱座」ということば。

 胡乱座――うろんざ。
 禅宗の法会で、定められた席次を無視して、勝手に席につくこと。
 時代小説を書いていたこともあり、「胡乱」という時代色をまとった熟語は知っていた。
 しかし胡乱座という3文字の意味はまだ知らなかった――。

***

 それにしても――。
 胡乱な輩(やから)が多い。
 政治家や官僚(役人)には、「胡乱な臭気」をまとった人物が多い。
 この「臭気」は目では確認できないが、どうにも「不快な臭気」は感知できる。

***

 たとえば、「原発再稼動」に関わる件で、「東電」という企業を代表して説明、釈明、弁明する者はすべからくこの 「臭気」をまとっていると感じる。さらに、その同族、同類である関係者たち――。

***

 そして現在の政治というフィールドに右往左往する連中のほとんど……に同質・同様のそれ(胡乱な臭気)を感じる。
 ニュース番組のテレビに彼らの顔が映し出されると、その「臭気」が画面から拡散するのダ。

***

 「胡散臭い」ということばがある。「面妖な」ということばもある。個人の場合だけでなく、お国柄にも当然それがある。アノ国もコノ国も……まったく!

***

 とんでもない嘘っぱちを堂々と押し通す人間がいる。骨のズイまで、心の根っこまで「胡乱な毒素」を沁み込ませているこの輩には「うしろめたさ」のかけらもない。だから、彼らは決して怯んだり、たじろいだりすることはない。恥知らずめが!

***

 いちばん悪質な嘘は、いちばん真実らしく偽装した言葉だ。
                      ―― ジイド/フランスの作家


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ケイちゃんの目 ↓

荒れる人心・狂いのある社会
じっと見ておいでになる石仏たち

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— posted by 本庄慧一郎 at 11:39 am  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第305回(通算417回)

「暴力」ということばとその周辺

 愚鈍な人間は、つねに鉄面皮な暴力をふるう。

―― アメリカの詩人・思想家エマーソン(1803〜1882)


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 暴力――この2字熟語から想起される事象にロクなものはない。
 その象徴的で究極の「暴力装置」は戦時の日本の軍隊だった。

***

 このところずっと、創作のベーシックな資料として、あの「十五年戦争」下における軍隊やその組織に取り込まれた個人について調べている。

***

 『「50年目の日本陸軍」入門』より引用する。
【私的制裁について】
リンチのメニューはもりだくさん
 激しい訓練を終えて兵舎に戻ってきても、ゆっくり休めるどころか、先述した使役や当番がまわってくる。そうでないものも身の回りの整理整頓は怠ってはならず、靴の手入れや下着の洗濯、銃器の手入れなどで時間が足りなかった。それでも初年兵は、上等兵の分を買ってでもしたのである。
 なぜ、そんなにまで古参兵に気を使ったかというと、なによりも私的制裁(リンチ)を恐れたからである。
 召集前の若者が兵役逃れに腐心したのも、じつは悪名たかきリンチから逃げたかったのだと書かれた資料もある。それほどリンチは恐れられたのだ。
 リンチといっても、ただ殴るだけではない。
たしかにリンチの第一は殴ることだった。「軍隊とは殴るところ」「訓練とは殴られること」といった記述は数多くみられるし、「文字通りの袋叩き、顔といわず頭といわず殴り蹴られ、二等兵の顔は凸凹だった」という記録もある。が、それ以外にも、じつにさまざまの工夫がリンチには凝〈こ〉らされていた。
 殴ることを軍隊ではビンタ(関西ではパッチ)というが、このビンタだけでも単純にバチーンッ! とやるビンタに始まり、整列ビンタ、往復ビンタ、上靴ビンタ(革のスリッパで殴る)、帯革〈たいかく〉ビンタ(革のベルトで殴る)、編上靴の靴底(鋲〈びょう〉がうちつけてある)で殴る、鞭〈むち〉で殴る、ゲンコツで殴る、対抗ビンタ等々があげられる。
 最後の対抗ビンタというのは、兵隊同士に殴らせるやり方である。たとえば2名にリンチを加える場合、並んで立たせておいて、バシッ、バシッと殴るのがふつうだが、対抗ビンタは、二人を互いに向き合わせて交互に殴らせるというやり方である。
 同じ階級の同じ釜のメシを食う仲間だからひどくは殴れない。そんな兵隊の気持ちを知っていながらワザと殴り合わせるわけで、じつに陰険である。さらに、満身の力をこめて殴ってないといって殴る回数をどんどん増やしたりしたそうだ。
 兵隊たちにしてみれば、少々痛くても回数が多くても仲間同士でやるよりは、上官に殴られる方が気が楽だったに違いない。
 とはいえ、スリッパやベルト、靴底で殴られると、真底こたえたという。
 ビンタを始めるとき、まず、
「メガネを外せえ! 歯をくいしばれっ!」
 と号令がかかり、次いでバシッとやられるわけだが、この最初の一発の痛さが、とうてい言葉では表わせないほどだとか。
 二発目からは単に衝撃だけで、痛みを感じないというのだが、最初の一発の痛みで、おそらく麻痺してしまうのだろう。
 それは、そうだろう。スリッパや鋲のうたれた靴底で顔面を殴られるのだ。痛いなんていうものじゃないだろうし、麻痺して当たり前だ。
 口の中も切れて血だらけになり、殴られた拍子に血が泡状になってゴボッとふき出る。その兵隊に、「山本一郎が悪くありました」などと謝罪の言葉をいわせようとするのだ。とうてい言葉にならないが、するとまた一発、ビンタがとんでくるという。
(「50年目の日本陸軍」入門 歴史探検隊・著 1991年 文藝春秋刊 pp.107-109)より

 現在、「軍隊」という組織は存在しないが、「私刑――リンチ」といえる残虐な行為事象は巷間に拡散した。

***

 「核」や「銃器」を前面に押し立てて、治安平和を声高にひけらかす国や政府要人たちのいかがわしさ。
 そして、その反面、一向に鎮静化することのない内戦や内紛にともなう一般市民たちの絶えることのない犠牲と辛苦――。

***

 鉄は人間を殺さない。殺すのは人間である。

 その手は、人間の精神に従う。

―― ドイツの詩人ハイネ(1732〜1809)


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ケイちゃんの目 ↓

鉢植えのユズの実を食べにくるヒヨドリ君
カメラでキャッチしにくい野生味の強い鳥です

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— posted by 本庄慧一郎 at 03:42 pm  

「社会&芸能・つれづれ愚差」第303回(通算415回)

類語新辞典(角川)から「体罰」を引く

 学校とか、その学校のクラブ活動という場で、「体罰」という言葉が当然のように使われている。
 このこと自体が、まず異常ではないか。
 「体罰」という言葉? あくまでも「犯罪者――罪人」に関わるもので、学校教育の場や健全なスポーツに関わる場には一切関係ない。
 新聞、テレビなどのマスコミもこの「体罰」という2文字を当然のように使用しているが、その非常識ぶりはただア然とする!

***

 「体罰」の類語を並べる。
【刑罰】――法律で犯人(犯罪者:筆者注)に加える制裁を意味する用語である。

 罰する/罰/罪する/罪/科する/処する/刑する/刑/刑罰/処罰/罪科/仕置/制裁/成敗/両成敗/処分/仮処分/量刑/実刑/重刑/重罰/酷刑/厳刑/極刑/処刑/服罪/服役/受刑/下獄/刑余/前科/減刑

(刑罰のいろいろ)
 体刑=体の自由を束縛する刑罰。体に苦痛や損傷を与える刑罰。
 体罰=体に苦痛を与える刑罰。
 禁固=一室内に閉じ込めておくこと。
 懲役=刑務所で労役に服させること。
 苦役=懲役または徒刑。
 徒刑=旧刑法で島などに送って労役させた刑。
 流刑=罪人を離島や遠方に追いやった昔の刑罰。
 流罪=罪人を離島や遠方に追いやった昔の刑。
 島流し=罪人を島や遠隔地に送った昔の刑罰。
 配流=島流し。
 遠島=江戸時代、罪人を遠く離れた島へ追いやった刑。
 所払い=江戸時代、居住地から一定期間追放された刑。
 追放=政府が不適格者を公職・教職などから退けること。
 パージ=(公職)追放。《parge》
 死刑=命を絶つ重い刑罰。
 死罪=死刑。書簡や上表文の末尾に用いる語で死に相当する重い罪の意。
 磔=柱などに張り付けて突き刺す刑罰。
 磔刑=はりつけの刑。
 火炙り=罪人を焼き殺す刑罰。
 火刑=火あぶりの刑罰。
 手討ち=武家時代に武士が家来や町人などを切り殺したこと。
 銃刑=銃で射殺する刑罰。銃殺刑。
 絞首刑=首を締めて死なせる死刑の一つ。
 縛り首=武家時代、手を縛り、首を差し出させて切った刑罰。
 首切り=首を切り落とすこと。
 打ち首=斬罪。
 斬罪=罪人の首を切り落とす刑罰。
 斬=打ち首にすること。
 引き廻し=江戸時代罪人を馬に乗せて引き回し、公衆に示した刑。
 晒し首=江戸時代、罪人の首を獄門にさらし民衆に見せた刑罰。
 獄門=昔の刑罰の一つで、断罪になった首を獄舎の門の近くの木などに懸けてさらしたこと。
 私刑=法律によらずに仲間うちで勝手に制裁を加えること。
 リンチ=私的制裁。
 火責め=火を使ってする拷問。
 水責め=顔面に水を浴びせたり無理に水を飲ませたりする拷問。
 拷問=自白などを強要して苦痛を与えること。
(「角川類語新辞典」1981年 大野 晋・著+浜西 正人・著 角川書店刊 pp614-615より)
 



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ケイちゃんの目 ↓

春を待つ

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— posted by 本庄慧一郎 at 11:59 am  


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自主CDを制作
21.1:130:128:0:0::center:0:1::
平和を願う歌
「鳥になれたらいいね」
総合プロデュース:本庄慧一郎
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