政治の中枢にウロウロする責任感ゼロの政治屋たち。
年功序列という旧弊を利用して「天下りとワタリ」を続ける役人たち。
大手企業のコンプライアンス滑落の経営者たち。
原発推進とその利益のお余りに寄生する有識者たち。
政治資金がらみの巨額のカネについて語る鉄皮面の議員。
17年間の逃亡生活に終止符うって自首した犯罪容疑者と関係者。
エトセトラ・えとせとら・etcetera…………キリがねぇ!
――で、ある資料を探していたら、いまから18年前(1994年)に、本名の望田市郎名で出版した自著と再会した。
そのホンの「異説熟語辞典 伸びる男のキーワード101」の1つ、「虚偽」の項を再録させて頂く。
どんな小さな虚偽も、根深く悪質な虚偽の親戚だ。
この程度のウソなどとタカをくくっていると、ウソの大海で溺死する。』
〔だまされる人よりも、だます人のほうが、数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね〕と書きしるしたのは太宰治であった。 ぜひそうあってほしいと思う。ひとを偽りたぶらかすような人間には、有無をいわさずそれ相応の因果応報を課してもらいたい。
いまどき、地獄に落ちるの、煉獄の苦しみを味わうの、はたまた冥土をさまよったあげく閻魔大王の拷問をうけるのといったところで、ハナ先でフンとあしらわれるかと思いきや、近頃の若いひとは案外に霊界やら幽界を信じていたりして、けっこう内心でビクビクなさるらしい。でも、この種のはなしを敏感に受けとめるのは、とりあえずまともな良心があるからなのかもしれない。
だいたい、日常、平気でウソをつくような人間のこころなどというものはとうに腐ってしまっているし、まっとうな想像力も枯らしてしまっているから、来世のことなどに思いをはせることはない。目先の3・3平米くらいしか感知できないのだ。
ウソといっても、親しい友人や恋人や家族との集いの折に、楽しい笑いに転化するようなウィットのあるウソをつくのはいい。でも、問題なのは、企業などがあれこれ大義名分をかかげてつく大きな虚偽に知らぬうちに加担していたりする時だ。
たとえば、マチ入りの紙袋に突っ込んだ一千万円の札束を「ホンの気持ですが」などと贈賄の相手に手渡す人間に、職務だからと随行したり、その受け渡しにひと役買わなければならない羽目に陥ったらどうする?
内心、頭をもたげた疑問や不信感や不安を無理強いに押さえ込まない、これが肝要だ。まともな感性や想像力を持つ者なら、この種の場面から咄嗟に危険な臭気をかぎ分けられるはずだ。つまりもう、近い将来、大きな虚偽に振り回されるはずの小さな虚偽――その導火線を掴まされているということなのだから。
そんな時はやはり勇気ある撤退を、再生のための意義ある方向転換をすべきだ。つらいが、辞表を叩きつけるのだ。証人喚問に疲れ果て、自分の命を自分の手であやめる……なんて愚かしい事態を拒否するために、まず自分の良心をウソで殺したりしないことだ。
虚偽を憎む者は、きっと救われる。すくなくとも拘置所や刑務所、そして「前科」という言葉とは無縁でいられる。
――「異説熟語辞典 伸びる男のキーワード101」
(望田市郎(本庄慧一郎)著/総合法令1994年刊より)
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