不粋な男である。趣味といえるような趣味がない。ゴルフ?マージャン?まるでキライ。旅行?書くための取材は別として、ワザワザ出かけることは少ない。
からだのための「1万歩ウォーク」は努めて実行するが。
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寒気を理由にその「1万歩ウォーク」をサボっている自分がイヤになる。それで、ソレを兼ねて、久々の荻窪のささま古書店に出かけた。
リュックサックにめいっぱいの10余冊を買い込んで、その重量(部厚い本もあって)に突っ転ばないように、しっかり歩いた。
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あの3・11以後(早くも2年の歳月が過ぎた)物書き業としての己の思いにブレが生じて、出版関係者(と大仰に言うほどでもない)やワイフの許諾を得て、「方向チェンジ」の準備をしてきた。
それは二又道でヒョイと角を曲がればOKといった簡単なコトではない。
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趣味でモノを書いているワケではないので、書くモノは、書いたモノは、カタチ(出版とか上演とか)にしなければ意味がない。
したがって、定年退職した人たちの「蕎麦打ち」作業のようにノホホンとしてはいられない。
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ささま書店で買い集めた本は、現在、挑戦している戯曲の資料本である。
たとえば「昭和特攻弾圧史」(全6冊のうちの1冊/大平出版)とか「ある昭和史」(色川大吉 中央公論社)といった昭和史を主題にしたモノばかりだ。
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なにしろ、「自宅はすべて本だらけ」である。「本たちは夜中に勝手によからぬことをしているかのように増殖する」は、親しくして頂いている文芸評論家の縄田一男氏のコトバだが。ウンウンだ。
書斎はもちろん、階段のワキも本ダナにしているし、階下の部屋二つも本だらけでアル。
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3・11のあと、ボランティア団体の要請もあって、数百点余の小説本(エンターテインメント類)を福島に運んでもらった。
古書店さんに来てもらって、演劇雑誌や明治・大正・昭和の(ン万円も出して買った!)パンフレットなど引き取ってもらえる本はワンサと処分した。
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さらに、コツコツ買い集めた小説や評論集は、ほとんどタダで古書店さんに引き取ってもらって、なんとか本のスペースを作った。
それらの本たちには、「ワイフに内緒にしてきたかつての恋人の手紙」を捨てるような未練があった――。
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必要な資料本は小生のエンピツ書きの原稿をすべてPC処理してくれている娘に、インターネットで検索し、即購入してもらう。北海道から九州までの遠隔地の書店から送り届けられて、とにかく便利。この冊数も多い。しかし、お気に入りの古書店に出かけて、ウンザリするような書物のカバーを眺めて、アレコレ時を過ごし、結局またン10冊を買い求めたりするのでアル。
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目下、昭和史について再勉強中である。昨年9月に上演したテアトルアカデミー睦組公演「炎と愛のフィナーレ/あるレビュー劇場の1945」も、2006年12月にテアトル・エコーで上演した「大都映画撮影所物語」も、芸能エピソードをからめているが、レッキとした昭和史ものだ。
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今回、ささま古書店で買い込んだ本の中にある「昭和特高弾圧史」は、資料本としてはきわめて確実であり有効だ。
あらためて舞台のホンを書くという思いを「井上ひさしさんの100分の8くらいのことは出来る」とヌケヌケと宣言している。(注・100分の8です!)
この「昭和特高弾圧史」に関連しての資料として、広辞苑のように部厚い「続・現代史資料6/軍事警察」「日本憲兵昭和史/憲兵司令部編」を図書館から借用した。とことんおカタイ資料本である。
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そういえば先々週には、「鋳物の街・川口」の図書館に出かけた。
必要とする本は「貸し出し不可」でワイフのフォローで大量のコピーをした。
現在の川口市は「どこにでもあるキレイなモダンな街」でまるで興味はない。
あの戦時下の「軍需景気にわく工場街」のデータを掴むのは至難のコトか?(作業続行)
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ささま古書店コレクションの中に「ある昭和史/色川大吉」に「東慶寺花だより/井上ひさし」がある。井上氏の時代小説も珍しいし、この本が彼の逝去後に出たモノであることに、小生にも格別の思いがある。(「俳句で綴る変哲 半世紀」(小沢昭一 岩波書店)も訃報の後に「ご恵贈本」を手にしたなあ。
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その井上氏の「東慶寺花だより」も、色川氏の「ある昭和史」も参考資料列記の頁を眺めて、あらためて大ビックリした。
井上作品では、シリーズや巻ものもあって、ざっと100点以上もある。
色川作品も、ほとんど同数というか、それ以上だ。
物書きとしてはお二人と同業(同期)の小生だが、この先達たちの「入れ込み」の度合いに、いまさらのように脱帽した!
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そういえば、広告や電波メディアの仕事をしている者で、まるでそれらしきモノ(刊行物・出版物)がない者が、しきりに「作家」を自称・連呼している場に出くわすことがある。(エラソーに言いたかねぇけどサ)アレって、哀れでサギっぽいね。
どこの世界にも、いつの時代にも「口先ばっかり野郎」がのさばる。イヤだなあ。
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先日、インターネットで購入してもらった、「女たちの太平洋戦争 朝日文庫」「華北戦記/中国にあったほんとうの戦争 朝日文庫」。もう1冊「一銭五厘の旗 暮らしの手帖」が届いた。
やっと確保した空スペースが、さっそく「新しい創作のカテ」でどんどん埋まってゆく。
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山積する蔵書のうち、師である劇作家三好十郎氏の著作本(多数の評論集、もちろん全4巻の作品集やずっしりと分厚い三好十郎氏に関する評伝など、約100点ほどになるか)を筆頭に、井上ひさし氏関係の本があれこれあって、第2位をしめるか。
「余命3ヶ月」の医師のがん宣告を受けて、肝臓がん3回手術の余後のベッドで、猛然と小説を書きはじめての小説「ダックコール」(早川書房)で、第4回山本周五郎賞を受賞した稲見一良氏。その後10年延命しての10冊の作品と雑誌、新聞等の多数のエッセイは大切に保存している。
この他、山本周五郎、藤沢周平、池波正太郎、さらに親しくさせて頂いた峰隆一郎氏の作品集はいずれもずらりと並べてある。
戯曲は真山青果全集や世界戯曲集などもある。
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3月6日付の朝日新聞の広告を見て、買うつもりの本がある。「いま日本はタカ派ばかり」(佐高信/毎日新聞社)。 惹句に「老害醜悪・石原慎太郎/ちゃっかり便乗タカ・猪瀬直樹/口先三寸タカ・橋下徹/中退不安タカ・安倍晋三/お笑い無責任タカ・ビートたけし」とある。オモシロソー!
佐高信氏の評論集も好んで買い求める。小生の嫌いな人物たちを、彼もまた小気味よくバッサリとやってくれるからだ。
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井上ひさし氏のエッセイ集「ふふふふ」(講談社文庫)は、彼の意志が明快に読めてGOOD。前回の芥川賞の「共喰い」(田中慎弥/集英社)は、途中で……飽きた。作者のお人柄やメッセージはオモシロソーなのに。
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とにかくいま、時代は「反動」「逆流」の気配が強い。それであえて戦時下、当時の国会で「反戦演説」をした斎藤隆夫とその関係資料も読み込みたい。
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寒月やさて行く末の丁と半
―― 変哲(小沢昭一)
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