あらためておのれの履歴をふり返ってみると、半世紀あまり一貫して日本語を素材にした仕事(ラジオ・テレビ・構成台本/舞台脚本/TVCMプロデユース・企画・COPY/時代小説・現代小説/五七五・評論集・エッセイ等)をしてきた。
現在の書斎は、古書店の倉庫のようで「創作の遊園地」になっている。
現在の書斎は、古書店の倉庫のようで「創作の遊園地」になっている。
●執筆スタッフ 本庄慧一郎(望田市郎)/みさき けい/深実一露
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有楽町「ミルクワンタン――鳥藤」のこと。
●資料本の中の「有楽町」。
「若年性認知症」は40歳以下でも発症する――という記事を鮮明に記憶している。
JR有楽町駅前の現在の東京交通会館ビルの一帯は、1945年8月15日の敗戦時は荒涼とした焼け野原だった。
たとえば、田村泰次郎の小説「肉体の門」の舞台になったように、現在の有楽町とは無縁の廃墟だった。
その後、菊田一夫作の「君の名は」の時代(1950年代)になって、なんとか「平和の顔」を取り戻してゆくが――こまかいあれこれのことは……忘れることはない!
●現在の東京交通会館が建つ以前は――。
あのあたり一帯は、焼け跡地に急ごしらえのバラックが出現。「衣食住」を戦火で失った庶民が、食料や衣服を求めて雑踏をきわめ、「すしや横丁」と呼ばれていた。
「ミルクワンタン――鳥藤」は(記憶によれば)その「すしや横丁」にあった。土間でだだっ広いスペースだった。
●昭和24(1949)年、藤波音吉さんが開店した。
ぼくが「ミルクワンタン」に親しむのは「物書き業」のスタート時。
ペンネーム「本庄一郎」の仕事はニッポン放送で生活費を得るために「プロ」として仕事した。ムキになっていたなあ。
かつてこのニッポン放送の有楽町駅よりに隣接してあったビデオホールは、ラジオ番組の公開録音にフル活用されており、同時にラジオ番組の制作プロダクションとしても活動していた。
目薬の参天製薬提供の「おはよう! 参ちゃんですよ」というラジオコント番組のホンを書き、さいわい好評を得ていた。
その参ちゃんの声を担当していたのは、アメリカのテレビ番組「名犬リンチンチン」の主役の男の子の声で売れていた北里深雪さんだった。
この「おはよう! 参ちゃんですよ」の制作スタッフの諸君とせっせと「ミルクワンタン」に通ったのだ。
●アドリブでのピアノは作曲家鈴木庸一さん。
青江美奈さんの「伊勢佐木町ブルース」などのヒット曲を書いた鈴木庸一さんとは気が合って、ぼくが初めてCMの作詞をした「明星リッチスパゲッテイの歌」などを作曲してもらい、仲良くしたなあ。
さてさて、「ミルクワンタン」に話は戻るが、その後の有楽町駅前のブラックマーケットの整備で、店は線路沿いの路地(現在地)に移転した。この店にもよく通った
須磨子ママの「あーら、本庄さん。いらっしゃい」と、いつものひときわ明るい「声」が耳に残っている。
●2021年4月23日(土)クローズ。
新聞記事にはそう記されている。
コロナ禍もある。そうでなくても、フラフラと銀座まで出かける気力も……なくなったなあ。
放送作家本庄一郎としてスタート。本庄慧一郎としての時代小説の著作本は数十冊。ラジオ・テレビの企画、コピーで……国の内外の賞は……。そして舞台脚本と……。現在、電子書籍は30冊になる。
あのユニークな「ミルクワンタン」の味と小型の急須に入れた熱燗の酒は、認知症などハネのけ「永遠の記憶」として「物書き人生」と共に残るだろう。
(朝日新聞2021年4月22日夕刊より)
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イラスト:やっぱっぱだいすけ
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