「ニッポンの芸能人」シリーズ34


熊倉一雄さんのこと
 05年5月30日。劇団テアトルエコー公演(俳優座劇場)「朝の時間」を熊倉さんのご案内で観る。
 そのパンフレットのデータに「熊倉一雄・1956年入団」とある。つまり来年2006年で満50周年ということだ。
 軽妙洒脱というが、現在の熊サンのテイストは正にそれ。
 人間、ものごころついて50年を経るとたいていガタがくる。が、少々そのお姿が丸くなられたものの、ステージでのフットワークは軽快である。
 そしてなによりも、「そっくり返えらない」お人柄がいい。
 熊サンとはラジオのコント番組や「少年ジャンプの歌」を歌ってもらったりとあれこれの仕事をご一緒にしたし、楽しい酒席もずいぶん共にした。(「帰ってきたヨッパライ」などを新宿歌舞伎町あたりで放歌高吟した!)
 ぼくはいま熱望している。「熊倉一雄テアトルエコー50周年」になにかオモシロイことをご一緒したいなあ、と。
 
小沢昭一さんのこと。
 2年前、書斎を大改造した。床から天井までの本棚の一隅に「小沢昭一スペシャルコーナー」がある。
 ぼく自身が買い求めた小沢昭一本に、ご本人がご恵贈くださった著作物やCDが収納されている。
 小沢さんとのかかわりももう50年……。
 ニッポン放送の朝の連続ドラマ「サザエさん」(長谷川町子原作)を叔父小沢不二夫が脚色していて、カゲでせっせと書いていた。
 磯野波平は東野英治郎、お舟は三戸部スエ。サザエは市川すみれ。そのほか若き日の(?)岸田今日子、故小山田宗徳。そして、20代だった小沢昭一さん。
 ぼくはもっぱら近所の酒屋「きくやさん」の小沢さん役の分を担当。「こんちはァ! 毎度ありィ!」がきまりぜりふで登場した。
 それがそのままタイトルになって、別の番組が生まれ、毎週のゲストに清川虹子などが登場した。
 その小沢さんが6月21日からの新宿末広亭に(10日間の定席)に出演するという新聞記事を見た。
 つい先日、小沢さんに「戦時中の寄席芸人たちのことを舞台のホン――コメディとして書くつもり」とお手紙をさしあげたところだ。
 小沢さんがオビをお書きになっている「大塚鈴本は燃えていた」(渡辺武男著)をご著者から贈られていたことと、小沢さんの分厚いご近著「寄席の世界」(朝日新聞社)が、もともと寄席好き、落語好きのぼくのココロを突き動かしたのだ。これも舞台のホンとしてまとめる。
 日々、そのお仕事の質と味わいを深めていく小沢さん。いい先輩です。

桂小金治さんのこと。
 05年6月3日、桂小金治さんからお電話をいただいて、30分以上、おはなしをした。
 ずっと昔、フジTVで毎日の5分間コント「待ッテマシタ!」をご一緒した。
 そして、黒澤明作品(「どですかでん」等)でもおなじみのベテラン三井弘次とのコンビでの「ぼうふら紳士」などの脚本も書かしてもらったなあ。
 世間を騙すペテン師ふうの二人が、結局は世のため人のために役立ってしまう――というコメディだった。
 テレビワイド番組の司会者としては「泣きの小金治」で大ブレーク。
 ぼくとしては、戦後の日活映画の大ファンだったから、裕次郎・旭・錠などのワキを固めた小金治さん、小沢昭一さん、そしてじかにお教えを乞うた高品格さんなどが大好きで(映画5社協定とやらのおかげで、日活には新劇系の俳優がいっぱい出演していた――滝沢修・宇野重吉・千田是也・東野英治郎、それに新国劇の島田正吾・辰巳柳太郎などの御大たちも)ほんとによく観ていた。
 小金治さんは大正生まれとおっしゃていたが、現在の口跡も口舌も明快で「いまあらためて……」高座や落語に熱い気持ちがあることを語られた。
 4・5年前、小ホールでの「禁酒番屋」を拝聴したが、文句なしに面白かった。
 6月は「朝日ホ−ル落語会」にというご予定だとか、ぜひ出かけていたいと思っている。
「はなしといっても〔咄〕も〔噺〕も〔話〕もありますけどね……」と語り口も熱い。
「咄は口から出まかせのはなし。やっぱり落語は何度も高座にかけて、その語り口の味わいを深めてこその……」
 まったくいまのテレビの連中の「口から出まかせのトークとやらはくそくらえ!です」とぼく。
 桂小金治という大先輩も、いいなあ!

屁理屈しか口にしない年寄りたち。
 人間、手足が思うように動かなくなるとつい、そのぶん口だけが余分に動くようになる。
 事実、ビアホールなどでの〔定年退職組のおじさんたち〕の理屈というより小骨ばっかりの話はハタで聴いていてもウンザリする。
 ぼくはいま、熊倉一雄さん、小沢昭一さん、 桂小金治さんという先輩をじっと目を凝らして見詰めている。

— posted by 本庄慧一郎 at 11:39 am  

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