「社会&芸能・つれづれ愚差」第20回(通算130回)

07年8月――敗戦62年目の夏8月のメモ

メモ(1) 不登校児童12万6000人
 この数字はあくまでも〔学校側が認めてる〕という数字だ。
 中学生においての割合はほぼ35人に1人――つまり1クラスに1人が「いじめ」で不登校ということである。
 原因は「いじめ」など複数の要因があるらしいが、教師たちにとってのさまざまな問題も顕在化している。同時に児童の保護者たちの学校や教師たちに対する「とんでもない狂態」もクローズアップされている。
 この学校という教育現場の荒廃の原因と責任は、長期にわたって居座った自民党政権にある。
 政治のリーダーたち――その閣僚たちのうさん臭さは、枚挙にいとまもない。虚言や暴言や失言はそのまま現在に至るまでの教育行政の失敗の証しである。
 早急な是正が求められているにもかかわらず、格差社会を正面きって是認する前世の遺物のような人物が主導権をにぎっていては、事情は悪化するばかりだ。
 前回の参議院選で少しは覚醒したらしい選挙民の〔自覚〕だが、まだ生ぬるい。
 「国民にとってはパンの次にもっとも大切なものは教育である」――フランス革命指導者・ダントン。
 やたら戦争をしたがる者たちがタワゴトを言っている場合ではない。

メモ(2) 米国のノーベル賞作家パール・バックのこと
 10代の頃、パール・バック(1892――1973)の中国を舞台にした大河小説「大地」を読んで衝撃を受けた。
 1930年代の若い男女の波乱に富んだ物語だが、いまもって鮮烈な記憶として残っているのは、極貧と飢えのさなかで、壁土を食うというシーンである。
 そのパール・バックの作品「神の火を制御せよ――原爆をつくった人びと」が、発表から半世紀のいま、出版されるとか。(径書房)
 テレビが愚かしい視聴率本位の劣化と醜態を晒している現在、伝統ある出版界にもまた場当たり企画が跳りょうするが、このパール・バックの作品の刊行には脱帽する。

メモ(3) 安倍首相の原爆忌式典のメッセージ
「今後とも、憲法の規定を遵守し、国際平和を誠実に希求し非核三原則を堅持していくことを改めてお誓い申し上げます」
 原爆忌式典においてヌケヌケとそう語る安倍首相のまるで〔自覚〕のない表情にただ恐怖といらだちを感じた。
 言行不一致のこのヒトを放置しておく現在の日本の民主主義というものは、とうに死んでいる――としか言えない。

メモ(4) 移動劇団・桜隊のこと
 1945年8月6日、移動演劇集団・桜隊は広島で被爆した。(東京新聞07年8月3日及び7日に紹介記事あり)
 彼らは(苦楽座――のちに桜隊となる)、当時の軍主導の統制に従い、戦意高揚をテーマにした軍需工場などの巡演を強制されていた。
 戦前の演劇や映画で活躍していた俳優丸山定夫や女優園井恵子らが参加していた。
 この劇団に同行するはずだった佐野浅夫さんは徴兵検査に合格して参加できず、原爆に遭遇せずにすんだ。
 丸山定夫は名優と評された人で、わが師劇作家三好十郎(1902年〜1958年)の親友だった。
 戦後丸山定夫が生きていたら「日本の新劇――いや、日本の演劇界全体の潮流が変わったはず」と言われた。
 ちょっとした古書店並みであるぼくのあまたの本の主役は三好十郎著作集である。そして「丸山定夫・役者の一生」(ルポ出版・1970年)。
 この本の刊行の監修にあたった池田生二氏(俳優――桜隊に参加しながらも難を免れた)には直接お会いしてお話をしたことがある。
 また、同じく監修をご担当なさった菅井幸雄氏は現在、日本演劇史の著作や劇評家としてご活躍中で、昨年06年のテアトルエコー公演、拙作「大都映画撮影所物語」について過分のおほめの批評を頂き、やはり直接お手紙とお電話でごあいさつをした。菅井氏は丸山定夫という稀有な才能を有した俳優に格別の思いをお持ちだったとか。
 戦後62年――あの残酷と修羅の歴史・戦争という事実をないがしろにしている者たちが、またぞろ無責任無自覚の暴言・妄言を吐き散らかしている。

※なお、新宿区初台にある新国立劇場のコケラ落とし公演は、井上ひさし作「紙屋町さくらホテル」で、この桜隊被爆の際のはなしをテーマにしている。



「戦闘に勝つのはひとりの指導者と追従者で、〔戦争〕に勝つのは自由人です」(スタインベック「月は沈みぬ」)







とっても、とってもうれしいです!(4) 本庄慧一郎

自主制作CD「鳥になれたらいいね/平和を願う歌・あなたに語りかける組曲」を聴いて下さった方の感想です。ご本人のご承諾を得て(要約させていただいて)ここにご紹介いたします。



涙が出そうにきれいな音楽……、今後、教会での平和集会の時、最初の祈りに使わせて頂きます。
子どもの頃から恵まれた最近の若い人たちが、戦争をすることの方に傾いていることを危惧しています。
ワーキング・プアーが増えている今の時代の閉塞感も、戦争という極端な考え方になりがちのようですね? 怖いことです。
平和は、私たち地球上の全人間に、神様が望まれていることだと思っています。
「戦争は人間が作っているものだ」と前・教皇ヨハネ・パウロ2世がおっしゃいました。
私の場合は、まだ仕事もあるのですが、できるだけ時間をつくって「平和の草の根運動」をしています。これからの若い人たち、子どもたちに、禍根を残したくはないと切に思っています。
(静岡/教会で平和のための集いを主催している主婦)



昔、戦火で兄弟を失った叔母が、ショックで寝たきりになりながら、「鳥になれたらいいと思った」とつぶやいていたことを思い出しました。
火の海が広がって、人が倒れていって……、でも鳥になればここから逃げられるだろうって、叔母は本当に思ったそうです。
(静岡県の主婦)



これからの日本は、戦争を実際に体験していない世代の人々が、政治社会の指揮をとっていかれます。
戦争の体験がないということは、その恐怖や深い喪失感も知らないということ。
私は、親や祖父母からかろうじて戦時体験の話を聞けた世代ですが、これかは、それすらも耳にできない子どもばかりになっていきます。
知らないからこそ、間違った道に進んでしまうこともあり得ます。それがとても恐ろしい。
本庄先生の歌詞のように、どの世代にも伝わる形で、戦争の恐ろしさ、平和のありがたさを伝えていくことは、戦争を知っている世代の方こそが出来る、本当に大きな意味のある運動だと思います。
もっと、戦争のことを語ってほしい、聞かせてほしい。真にそう思います。二度と、間違った選択がなされないように。間違った道に進まないように。
(東京/園田容子――このCDの作曲・編曲者)

— posted by 本庄慧一郎 at 03:11 pm  

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*** お知らせ ***
自主CDを制作
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平和を願う歌
「鳥になれたらいいね」
総合プロデュース:本庄慧一郎
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